はじめに
医療研究が日々進化する中で、mRNA医薬は多くの疾患の有望な治療法として注目されています。 mRNAの特定のタンパク質を細胞内で生成する能力を治療やワクチンに使用することで、世界中の科学者が安全で費用対効果の高い方法として、mRNAをベースとしたアプローチを開発することが可能になっています。
mRNA医薬は、標的タンパク質をコードしたmRNA治療薬を投与し、細胞質内で標的タンパク質を産生させることで、治療効果をもたらします。
mRNAはそのままでは安定性が低く体内で比較的容易に分解されてしまうため、脂質ナノ粒子(LNP)などに内包されて投与(製剤化)されます。
mRNA医薬品の開発は、これからの私たちの健康や社会全体に多大な恩恵をもたらす可能性を秘めています。今後の進展に期待が高まります!
基礎研究
in vitro transcription(IVT)によるmRNA合成を開始するには、まず標的タンパク質をコードする遺伝子(GOI)配列を含むDNAテンプレートを設計します。このテンプレートはIVTでのmRNA合成の設計図として機能します。IVTとは、RNAポリメラーゼがDNAテンプレートを転写し、RNAを合成するプロセスです。転写後、テンプレートDNAを除去することで、下流のアプリケーションに干渉しないようにします。RNA合成が完了すると、次は精製プロセスとなります。LiCl沈殿やクリーンアップキットを使用して夾雑物を除去し、高品質のRNAを精製することで下流への干渉リスクを最小限に抑えます。その後、5'cap構造の追加やポリアデニル化(poly A鎖)などの転写後修飾を行います。5'cap構造はmRNAを分解から保護し翻訳効率を高め、ポリA鎖はmRNAを安定化させ翻訳を促進します。研究段階でのワークフローは、次のステップとなるスケールアップを考慮して慎重に設計する必要があります。
プロセス開発
mRNA合成に限ったことではないですが、実験室規模の基礎研究から産業規模の製造への移行はそう簡単ではありません。 プロセス開発では、まずは小規模での生産を行い、mRNAが品質に影響を与えずに大規模製造に移行できることを確認する必要があります。さらに、プロセス開発には一貫した品質の材料を使用する必要があります。例えば、GMPグレード品質に匹敵する高品質グレード(HQ)の試薬を使用することで、GMPグレード製造へのスムーズな移行が促進されます。また、研究~プロセス開発のような中規模への移行においては、合成したmRNAの安全性と有効性がスケールアップのプロセス全体で一貫している必要があります。そのため、酵素やその他の原料を大容量パッケージサイズで使用することで、その一貫性を維持し、ロット間のばらつきを最小限に抑えることができます。
大規模製造
プロセス開発から大規模製造への移行も、単純に直線的にスケールアップを行うだけではなく、製造プロセスが効率的で一貫しており、製品が要求を満たしていることを慎重に評価する必要があります。専門的な知識と設備を備えた受託サービスを利用すると、大規模製造への移行を効率化することができます。 タカラバイオのGMP対応のmRNA製造の受託サービスでは、GMP準拠のもと、各種用途に応じたmRNAの製造と品質試験を承ります。さいごに
mRNA医薬品研究を小規模な基礎研究から大規模製造に移行することは、多くのステップを伴う長いプロセスです。タカラバイオでは、mRNA合成(in vitro Transcription)に使用する酵素各種および合成キットを取り揃えており、加えて、プロセス開発時等の使用を想定したHigh Quality(HQ)グレードやRNA製造の原材料となるGMPグレードなど、各開発段階に対応可能な酵素開発を進めていますので、ぜひご利用ください。 mRNA合成(in vitro Transcription)製品ガイド3 件