2020年8月18日 更新

ヒトiPS細胞を用いた多発肝のう胞症(Polycystic liver disease)のin vitroモデル作製

東海大学医学部 基礎医学系分子生命科学 准教授 紙谷聡英先生【ユーザー様論文の紹介】

肝疾患モデル作製の研究

Cellartis iPS Cell to Hepatocyte Differentiation System(製品コード Y30055) のユーザー様である東海大学医学部基礎医学系分子生命科学 紙谷聡英先生らによる本製品を用いた肝疾患モデル作製の研究成果がStem Cell Researchに掲載されています。

An in vitro model of polycystic liver disease using genome-edited human inducible pluripotent stem cells.
Akihide Kamiya et al.,(2018)Stem Cell Research 32,17-24


先生にご研究内容や製品使用のご感想についうかがいました。

ご研究内容
多発肝のう胞症(polycystic liver disease. PLD)は肝臓内に胆管細胞に由来するのう胞が多発する希少疾患であり、のう胞の巨大化による周囲の臓器の圧迫などが問題となる。変異胆管細胞の増殖などが原因とされ、Protein Kinase C substrate 80K-H(PRKCSH)などが病因遺伝子として報告された。しかし、ヒト細胞を用いた多発肝のう胞症のモデル系が存在しないことが病態解析を困難にしている。本研究ではヒトiPS細胞から肝前駆細胞、さらに胆管前駆細胞への分化誘導を行った。得られた細胞を細胞外マトリクスに包埋培養し、胆管マーカー(サイトケラチン7, 19)陽性で肝細胞マーカー(αフェトプロテイン)陰性の胆管様構造体を誘導できることを見出した。次にPRKCSH遺伝子座をゲノム編集酵素(CRISPR/Cas9)で変異させたヒトiPS細胞を作製し、in vitroで病態解析可能なモデル構築を行った。PRKCSH変異iPS細胞からは野生型と比べて多数の胆管様構造を誘導できることがわかり、PRKCSH変異が胆管系への分化促進等に関わる可能性を示した。以上の結果から、ヒトiPS細胞とゲノム編集技術を用いることで難治性胆管疾患のin vitroモデルが構築できることがわかった。

詳細はこちら

インタビュー
・Cellartis iPS Cell to Hepatocyte Differentiation Systemを使ったきっかけは何ですか?
ヒトiPS細胞から肝臓系の細胞への分化誘導には様々な手法が多くの研究グループから報告されており、我々も論文として報告しています。一方で細胞分化が不安定であったり、iPS細胞の培養に必要なフィーダー細胞が肝分化に影響するのではという懸念もあり、フィーダーフリーでiPS細胞が培養できるCellartis Systemを試すことにしました。

・実際に使った感想はいかがでしたか?
CellartisのフィーダーフリーiPS細胞培地およびiPS Cell to Hepatocyte Differentiation Systemの両方を使用したのですが、それまでに使用していたフィーダー細胞を用いる培養法に比べて簡便に継代培養できる上に、 Hepatocyte Differentiation Systemによる肝細胞分化が非常に安定しており、実験の効率が格段に上がりました。

・使われたことがない方に対して、一言お願いします。
ヒトiPS細胞から肝細胞分化の過程では、細胞密度などによって分化効率が大きく影響され、実験結果がそれに影響されることがよくあります。Cellartisシステムの利点は、各実験試行でのぶれが少なく、結果が安定していることにあり、実験の効率化を求める方にお勧めできると思います。
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