プラスミドDNAの抽出は、分子生物学実験で頻繁に行われる重要な手法であり、使用目的に応じてさまざまな抽出法があります。
その中でもアルカリSDS法は、クローニングに用いるプラスミドDNAの抽出に広く利用される、一般的で簡便な方法です。この方法で得られたプラスミドDNAは、遺伝子クローニングや大腸菌の形質転換に適しています。
アルカリSDS法は、細胞壁の破壊とタンパク質の変性を同時に行えるため、迅速かつ効率的な抽出が可能です。さらに、操作が簡単で多検体処理にも適している点が特徴です。
ここでは、「アルカリSDS法」について、わかりやすく解説します。
この処理により、分子量の小さな閉環状プラスミドDNAは変性されにくいですが、ゲノムDNAは変性して一本鎖となり、タンパク質も変性した状態で溶液中に回収されます。
この中和により、ゲノムDNAは分子量が大きいため元の二本鎖構造に戻りにくく、一本鎖に変性したままとなります。
結果として、変性したゲノムDNAやタンパク質は沈殿し、プラスミドDNAは可溶性のまま溶液中に残ります。
その後、フェノール抽出やエタノール沈殿を行い、プラスミドDNAを精製します。
このバッファーにRNaseを加えることで、RNAの混入を防ぎます。
ゲノムDNAの断片化を防ぐため、ボルテックスによる激しい攪拌は行わず、チューブを穏やかに反転して混合します。
一方、サイズの小さいプラスミドDNAは環状を保ったまま上清中に残ります。
遠心分離後、プラスミドDNAを含む水層(上清)を回収し、別のチューブに移します。
この際、中間層(ゲノムDNAやタンパク質)やフェノール層(有機溶媒層)を吸わないように注意します。
その中でもアルカリSDS法は、クローニングに用いるプラスミドDNAの抽出に広く利用される、一般的で簡便な方法です。この方法で得られたプラスミドDNAは、遺伝子クローニングや大腸菌の形質転換に適しています。
アルカリSDS法は、細胞壁の破壊とタンパク質の変性を同時に行えるため、迅速かつ効率的な抽出が可能です。さらに、操作が簡単で多検体処理にも適している点が特徴です。
ここでは、「アルカリSDS法」について、わかりやすく解説します。
アルカリSDS法の原理
アルカリSDS法によるプラスミドDNA抽出の主なステップは以下の通りです。細胞の溶菌
大腸菌を強アルカリ条件下で、SDSなどの強力な界面活性剤にさらすことで溶菌します。この処理により、分子量の小さな閉環状プラスミドDNAは変性されにくいですが、ゲノムDNAは変性して一本鎖となり、タンパク質も変性した状態で溶液中に回収されます。
中和
酢酸カリウム溶液などの中和液を加えてpHを中性に戻します。この中和により、ゲノムDNAは分子量が大きいため元の二本鎖構造に戻りにくく、一本鎖に変性したままとなります。
結果として、変性したゲノムDNAやタンパク質は沈殿し、プラスミドDNAは可溶性のまま溶液中に残ります。
精製
遠心分離により沈殿物を除去し、上清に含まれるプラスミドDNAを回収します。その後、フェノール抽出やエタノール沈殿を行い、プラスミドDNAを精製します。
手順
1.細胞懸濁 (Resuspension)
遠心で集めた大腸菌ペレットをバッファーに懸濁します。このバッファーにRNaseを加えることで、RNAの混入を防ぎます。
2. アルカリSDS処理 (Lysis)
SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)とNaOH(水酸化ナトリウム)を加え、細胞膜を破壊しDNAを変性させます。ゲノムDNAの断片化を防ぐため、ボルテックスによる激しい攪拌は行わず、チューブを穏やかに反転して混合します。
3. 中和 (Neutralization)
酢酸カリウムなどの中和液を加えると、ゲノムDNAとタンパク質が凝集・沈殿します。一方、サイズの小さいプラスミドDNAは環状を保ったまま上清中に残ります。
4. 遠心分離
遠心分離を行い、沈殿を除去します。プラスミドDNAを含む上清を新しいチューブに移します。5. フェノール・クロロホルム処理
回収した上清に同量のフェノール・クロロホルムを加え、ボルテックスで混合します。遠心分離後、プラスミドDNAを含む水層(上清)を回収し、別のチューブに移します。
この際、中間層(ゲノムDNAやタンパク質)やフェノール層(有機溶媒層)を吸わないように注意します。
図1.フェノール・クロロホルム処理を行った後の遠心分離
これにより高純度なプラスミドDNAが得られます。
高収率:プラスミドDNAを効率よく分離、抽出できます。
培養スケールを自在に調整:ミニスケール(培養液 2 ml程度)からラージスケール(培養液 100 ml以上)までさまざまな培養スケールでの精製が可能です。
低コスト:特別な試薬や装置は不要で、安価に実施が可能です。
RNAの混入:RNase 処理を行わない場合はRNAが残り、純度が低下します。
アルカリ変性の影響:サイズの大きなプラスミドでは、変性により構造が損傷・切断する可能性があります。
残留物の影響:SDSや塩が残留すると、下流の反応(制限酵素処理やPCR)に悪影響を及ぼします。
エンドトキシンの混入:簡易的な精製法なので、抽出したプラスミドには大腸菌由来のエンドトキシンが含まれます。エンドトキシンはトランスフェクション効率を低下させたり、細胞毒性、炎症性サイトカイン産生などの要因となります。
この方法の理解は、分子生物学実験を始める上での第一歩とも言えます。
実際に操作を行う際には、各ステップの原理を意識することで、より安定した結果を得ることができます。
アルカリSDS法は、日常的なプラスミド抽出には非常に有用ですが、トランスフェクションなど高純度なDNAが必要な場合には、他の精製法を選択する必要があります。
タカラバイオでは、用途や培養スケールに応じたプラスミド抽出・精製試薬を販売していますので、目的に合わせてご利用ください。
マッハライ・ナーゲル社製品選択ガイド<DNA抽出・精製・クリーンアップ>
◆参考文献
実験医学別冊 目的別で選べる核酸実験の原理とプロトコール
株式会社羊土社 平尾一郎、胡桃坂仁志
6. エタノール沈殿
プラスミドDNAを含む水層(上清)からエタノール沈殿によりDNAを回収・洗浄します。これにより高純度なプラスミドDNAが得られます。
アルカリSDS法の利点と注意点
利点:
簡便で迅速:手順がシンプルで、短時間で抽出可能です。高収率:プラスミドDNAを効率よく分離、抽出できます。
培養スケールを自在に調整:ミニスケール(培養液 2 ml程度)からラージスケール(培養液 100 ml以上)までさまざまな培養スケールでの精製が可能です。
低コスト:特別な試薬や装置は不要で、安価に実施が可能です。
注意点:
ゲノムDNAの混入:アルカリSDS処理後に強く混合すると、断片化したゲノムDNAが混入する可能性があります。RNAの混入:RNase 処理を行わない場合はRNAが残り、純度が低下します。
アルカリ変性の影響:サイズの大きなプラスミドでは、変性により構造が損傷・切断する可能性があります。
残留物の影響:SDSや塩が残留すると、下流の反応(制限酵素処理やPCR)に悪影響を及ぼします。
エンドトキシンの混入:簡易的な精製法なので、抽出したプラスミドには大腸菌由来のエンドトキシンが含まれます。エンドトキシンはトランスフェクション効率を低下させたり、細胞毒性、炎症性サイトカイン産生などの要因となります。
まとめ
アルカリSDS法は、大腸菌からプラスミドDNAを効率的に抽出するための基本的な技術です。この方法の理解は、分子生物学実験を始める上での第一歩とも言えます。
実際に操作を行う際には、各ステップの原理を意識することで、より安定した結果を得ることができます。
アルカリSDS法は、日常的なプラスミド抽出には非常に有用ですが、トランスフェクションなど高純度なDNAが必要な場合には、他の精製法を選択する必要があります。
タカラバイオでは、用途や培養スケールに応じたプラスミド抽出・精製試薬を販売していますので、目的に合わせてご利用ください。
マッハライ・ナーゲル社製品選択ガイド<DNA抽出・精製・クリーンアップ>
◆参考文献
実験医学別冊 目的別で選べる核酸実験の原理とプロトコール
株式会社羊土社 平尾一郎、胡桃坂仁志
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