細胞培養は、生命科学・医学・薬学などのさまざまな分野の研究に欠かせない重要な技術です。しかし、初めて取り組むときは不安や疑問を感じることも多いでしょう。
この記事では、これから細胞培養を始める方に向けて、基礎知識・培養環境・操作技術・評価方法について、やさしく丁寧に解説します。
また、細胞の状態を評価する方法も理解しておくことで、実験の信頼性を高めることができます。
<こんな人におススメ!>
・細胞、培地の基礎知識
・培養環境と無菌操作
・細胞数のカウント試験や生存率試験

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この記事では、これから細胞培養を始める方に向けて、基礎知識・培養環境・操作技術・評価方法について、やさしく丁寧に解説します。
細胞と培地の基礎知識
- 細胞の種類
細胞培養に使われる細胞は、以下のように分類されます
初代細胞(プライマリー細胞)
特徴:動物やヒトの組織から直接取り出した細胞
利点:生体に近い性質を持つため、より「本物に近い」反応が得られます。
注意点:正常細胞は分裂回数に限界があり、長期培養には向きません。
不死化細胞(継代可能な細胞株)
特徴:腫瘍由来や遺伝子改変により、無限に増殖可能
代表例:HeLa細胞、HEK293細胞など
利点:安定して長期間使えるため、実験の再現性が高い。 - 培地の役割と種類
培地は、細胞が生存・増殖するために必要な培養環境と栄養源を供給するものです。主な構成要素は以下の通りです。
無機塩類:浸透圧の調整、細胞機能の維持に関与しています。
アミノ酸:タンパク質合成に必要不可欠な成分です。
ビタミン・糖類(主にグルコース):エネルギー源として利用されます。
血清(FBSなど):成長因子やホルモン、増殖、接着因子などを含み、細胞の増殖や機能維持を助けます。
抗生物質(任意):細菌などのコンタミネーション(汚染)を防ぐために使用されます。ただし、細胞の性質に影響を与える可能性があるため、必ずしも使用が推奨されるわけではありません。
代表的な培地の例:
DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)
RPMI-1640
MEM(Minimum Essential Medium)
細胞の種類によって適した培地が異なるため、目的に応じた選択が重要です。
市販されている多くの細胞は、それぞれの細胞に適した専用の培地を販売しています。タカラバイオでは、PromoCell社の正常ヒト細胞とその専用培地やCellartisブランドの幹細胞用培地を取り扱っており、目的に応じて利用していただけます。
培養環境と無菌操作の基本
- 培養環境の管理
細胞は生きているため、環境の管理がとても重要です。
一般的な哺乳類細胞の培養条件は以下の通りです。
温度:37℃(哺乳類細胞に適した温度)
CO2濃度:5%(培地のpH調整のため)
湿度:約95%(培地の蒸発を防ぐため)
これらの条件を維持するために、CO2インキュベーターが使用されます。 - 無菌操作
細胞培養では、細菌やカビ、ウイルスなどの汚染(コンタミネーション)を防ぐため、無菌操作が不可欠です。無菌操作は、こうした汚染源によるリスクを最小限に抑えるための基本的な手順を指します。
無菌操作の基本のポイント:
通常、クリーンベンチ(バイオハザードベンチ)内で作業します。
作業者は清潔を保ち、専用の白衣を着用します。
70%エタノールで器具・手指をこまめに消毒します。
滅菌済みの器具・培地・ピペットチップを使用します。
素早く、しかし丁寧な操作を心がけます。
作業後はクリーンベンチ内をUV滅菌します。
最初は慣れが必要ですが、正しい手順を繰り返すことで自然と身につきます。
細胞数カウントと生存率の評価
細胞の健康状態や増殖状況を把握するためには、定期的な評価が欠かせません。- トリパンブルー染色法
トリパンブルー染色法は、生細胞は染色されず、死細胞のみが青く染まる性質を利用した評価法です。以下の手順で細胞数と生存率を評価します:
- 細胞懸濁液とトリパンブルー染色液を適量混合します。
- 血球計算版(ヘモサイトメーター)とカバーグラスの間に混合液を滴下します。
- 顕微鏡で生細胞・死細胞をカウントします。
細胞生存率の計算式:
生存率(%)= 生細胞数 ×100 生細胞数+死細胞数 - その他の評価法(参考)
MTTアッセイ/WSTアッセイ:代謝活性に基づいて、細胞増殖活性を評価します。
フローサイトメトリー:蛍光抗体などで染色した細胞を解析します。より詳細に細胞の状態を評価できます。
まとめ
細胞培養は、正しい知識と丁寧な操作を積み重ねることで、誰でも確実に習得できる技術です。基本を押さえ、培養環境の管理や無菌操作を意識することで、安定した培養が可能になります。また、細胞の状態を評価する方法も理解しておくことで、実験の信頼性を高めることができます。
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