2023年10月3日 更新

入門者のためのPCRの原理

これからPCRを学ぶ方向けに、PCRの原理についてご紹介いたします。

目次

近年、病原微生物の検出や犯罪捜査、体質のリスク診断などで遺伝子検査が多用されています。
特にここ数年は新型コロナウイルス感染症の検査として、PCRという言葉を毎日のように耳にされているのではないでしょうか。
この記事では、PCRという言葉は知っているが詳しくは分からない、という方に向けて、PCRの原理をご紹介いたします。

PCRとは?

PCRは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の頭文字を取った用語で、DNAの特定の領域を増幅するための手法です。
DNAの熱変性、一本鎖DNAへのプライマーの結合、DNAポリメラーゼという酵素による相補鎖合成という工程を25~30回繰り返し、目的のDNAを数時間で100万倍に増幅することが可能です。

DNAとは?

DNAはDeoxyribonucleic acid(デオキシリボ核酸)の頭文字をとったもので、遺伝情報を担う物質です。
2本の鎖がからまった二重らせん構造をとり、それぞれの鎖はアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の4種類の物質(塩基)が連なって構成されています。
DNAが二本鎖の構造をとる際には、対合する塩基間に水素結合が形成されます。対合する塩基の組み合わせは特異的で、AとT、GとCが必ずペアになります。これを「相補性」と言います。
DNAの相補性

プライマーとは?

PCRの際に必要となるプライマーもDNAですが、こちらの構造はごく短い一本鎖のDNAです。
増幅を行いたいDNA領域を設定し、その領域を挟むようにペアでプライマーを設計、合成します。このペアをForward/ReverseあるいはSense/Antisenseと呼ぶことがあります。

PCR反応

DNAの熱変性
鋳型となる二本鎖DNAを熱変性させて一本鎖DNAに解離させます。 DNAは塩基間の水素結合により二本鎖になっていますが、94~98℃に温度を上昇させると、 その塩基間の水素結合が切断され、二本鎖DNAが一本鎖に解離します。
鋳型DNAを1本鎖に変性

一本鎖DNAへのプライマー結合
一本鎖になったDNAにプライマーを結合させます。 温度を50℃~65℃に下げると、一本鎖になったDNAは再び二本鎖に戻ろうとしますが、 反応液に加えてあるプライマーは元のDNAよりも短く、量も多いため、元のDNAが二本鎖に戻るよりも優先して鋳型のDNAに結合します。
この時、塩基のA-T、G-Cの相補性により、特定の位置にプライマーは結合します。
鋳型DNAにプライマーを結合

DNAポリメラーゼによる相補鎖の合成
DNAポリメラーゼによって、プライマーを起点として元のDNAの配列を基にした相補的な鎖を新たに合成します。 温度をDNAポリメラーゼの至適温度(68~72℃)まで上昇させると、DNAポリメラーゼによる合成反応が開始されます。
DNAの増幅

上記の1連の工程で、目的のDNAは2倍になります。この工程を繰り返すことで、目的DNAを理論的には100万倍にまで増幅できます。
DNAの増幅2

まとめ

PCRは汎用性の高い技術であり、分子生物学の研究分野だけではなく、医療分野で癌やエイズなどの研究、診断、食品分野での微生物検査、遺伝子組み換え作物の検定、米、肉の品種鑑定、法医学分野での親子鑑定、犯罪捜査など多彩な分野で応用されています。

PCRの目的や増幅したいDNA領域の長さ、鋳型DNAの精製度などによって、使用するDNAポリメラーゼ(PCR酵素)を使い分けることで、最適な結果を得ることが可能です。

これからPCR実験を始める方を対象として、実験を行う際の留意点を解説した資料がございます。
こちらも是非ご一読ください。 PCR実験の手引き


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